会計ソフトといえば、弥生会計等を筆頭に、パソコンにインストールして利用するスタイルが一般的でした。
それがここ数年、ネット経由でオンラインソフトを利用するスタイルがじわじわ広がっています。

ワードやエクセルと言った有名ソフトもしかりで、ソフトウエアの世界では、オンライン型へ移行していくのが時代の流れなのだと感じています。
ソフトを売る側にしたら、インストール型の単発商売より、毎月課金で未来永劫儲かるオンライン型のほうが良いに決まってますしね。
(オンライン型は一見安そうに見えるので、実に商売上手です。)

会計ソフト業界でのオンライン化の本格的な始まりは、2013年頃にfreeeという会社とマネーフォワードという会社が“クラウド会計”というキャッチコピーのもと、オンラインの会計ソフトサービスを開始した頃だと思います。
単なる偶然なのでしょうが、この2社はほぼ同じ時期にサービスを開始しており、freeeのほうが少しだけ早かったようです。

その後2社は順調に業績を伸ばしており、弥生会計といった老舗の会計ソフト会社も、あわててクラウド化に取り組んでいます。
会計ソフト業界は旧態依然としており、進歩や競争の少ない甘い業界だと昔から感じていましたので、この2社の参入は非常に刺激的で、個人的には大歓迎という思いでした。

ところが昨年、突然freeeがマネーフォワードを特許侵害で訴えました。
訴えた内容は、freeeが特許としてもっている“自動仕訳”というシステムをマネーフォワードが真似した(?!)、というものです。

いわゆるITベンチャー企業が、いきなりライバルを特許関係で裁判に訴えるという事態は非常に珍しく、かなり驚きました。
また、その“自動仕訳”とよばれる仕組み自体が、会計ソフト的には正直大した技術でもなく、こんな程度のもんで特許取ってたんや!、にも驚きました。
(IT技術者ではないので、そのシステムの凄さや特許の正当な評価は出来ませんが、利用者サイドからみると本当に大した技術や発想とは思えず・・・、昔から有ったんじゃないの?くらいの話でして・・・。)

で、昨日、東京地方裁判所で判決が出て、freeeの請求は棄却、つまりマネーフォワードの勝ち、って事になりました。
freeeサイドが高裁へ控訴するかどうかは検討中だそうです。

freeeの社長いわく、
「スタートアップ企業が独自の技術と創意工夫でイノベーションを生み出すには、合理的な範囲で権利を主張すべきと考えている。それが認められなかったのは残念」
だそうです。

いやあ、この程度(失礼!)の自動仕訳で、“独自の技術と創意工夫でイノベーションを生み出す”、って言っちゃっていいんですかね。
人工知能の将棋ソフトが棋士に勝てる時代にしては、単なる過去履歴の学習機能的なもののようで、これで特許取ってライバルを訴えるって、ITベンチャー企業としては恥ずかしいくらいの話なんじゃないの???って印象が個人的にはあります。

個人的には、freeeはアップルっぽく、マネーフォワードはマイクロソフトっぽい、と勝手に思っていたのですが、今回の件で、freeeはちょっと残念な会社のイメージになってしまいました・・・。
ビジネスとしては、特許なんて獲ったもん勝ちですから、獲った特許は武器として使うべきなんでしょうが、これから世間に認知して貰い、利用者やスポンサーにも気に入って貰わなければならないベンチャー企業としての立ち位置を考えると、イメージダウンによるマイナスも結構大きい気がします。