確定申告を振り返り、改めてブログに書いておこうと思った話題が、
 “スーツ代って経費でおちませんか?!”の話。

個人事業主さんが初めて確定申告をする時、本当によく聞かれる質問です。
特に営業系の仕事やスーツ着用が当たり前の仕事の事業主さんの場合、深刻な話です。

で、結論は、“基本的には難しいです。”、というお答えになります。
税務署へ行って尋ねられたら、もっと厳しく“ダメ!”と言われるかもしれませんし、多くの税理士さんが“う~ん、ちょっと難しいねえ”と答えると思います。

で、その根拠となる法律を改めてここに書いておきます。(個人事業、所得税の話です)
まず、所得税法第45条に、“こういうものは必要経費に算入したらアカン!”と書いてありまして、その第1項に、
1.家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの   
とあります。

“家事上の経費”とは生活費等の完全にプライベートな費用の事で、“これに関連する経費”(家事関連費と呼ばれます)とは、プライベートと仕事の両方が混在する費用といったイメージです。
スーツはほとんど仕事でしか着ないといっても、法事や結婚式の2次会といったプライベートで着れるものでもあり、この法律に定める家事関連費に該当するとされています。
(ここで反論しても良いと思いますが)

ただ、家事上の経費がダメなのは分かりますが、混在しているならちょっと認めて・・・、と普通思いますよね。
で、救いとなるのがこの“政令に定めるもの”で、この政令とは、所得税法施行令第96条で、家事関連費でも以下の内容ならOKと書いてあります。

1.家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
2.省略

さらにこの条文を解説した所得税法基本通達45-1,2では、
令第96条第1号に規定する“主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要”であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。
ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。
と書いてあります。

ややこしいですが、家事関連費が必要経費と認められるポイントは、
“仕事上絶対に必要で、必要である部分を明らかに区分することができる。”
ということです。

つまり、仕事とプライベートの混在している費用は、きっちり合理的に区分することが出来れば、仕事部分に関しては必要経費に認めます、というのが法律や通達の解釈です。
長々と書いてきましたが、じゃあスーツ代はどうやねん!って話に戻りますと、現実的に仕事で使っている金額とプライベートで着ている金額の区分が出来にくいので、必要経費算入は難しいです、という結論です。

が、絶対に100%仕事にしか使っていないと立証できる!とか、
年間着用時間を仕事とプライベートで完全に記録して、比率を出して区分するとか、
背中に“安永税理士事務所!”とネームを入れて、結婚式や法事では恥ずかしくて着れないとか、
(いや、恥ずかしくて仕事でも着れない・・・)

あくまでも難しい、であって、完全にダメではないと言うのが個人的な結論です。
これに関しては参考となる判例もありますが、またの機会に・・・。