中央競馬で人気の女性ジョッキーである藤田菜七子騎手が突然引退することになりました。
JRAの調整ルーム内において、禁止されている外部との通信を過去に行っていたと週刊文春に報道され、騎乗停止となった事がきっかけのようです。

中央競馬の騎手は、レース前日の夜から調整ルームという合宿所のようなJRAの施設に泊まることが原則として強制されます。
競輪や競艇等もそうですが“公正なレース運営”の為に、競技者はレース直前に外部との接触を断つ目的でこのような施設への宿泊等が強制されます。

JRAのサイトに調整ルームの説明がありますのでご参照。
分かり易く言うと、レースに関するさまざまな情報が確定するタイミングにおいて、外部の悪い人間(ヤクザ等)と談合して八百長を企画したり、レース結果に繋がるような内部情報の漏洩等をを防止する為です。

まあ前日から連絡を断ったところで、悪い事する方法はいくらでもあると思いますが、少なくとも抑止力としてそういう措置がとられています。
ところが、昨年の5月にJRAの若手ジョッキー6人が調整ルーム内でスマホを使用していたことが発覚しました。

スマホで過去のレース映像を見ていた程度ならまだマシだったのですが、外部の人と通信していた事も判明し騎乗停止等の処分を受けました。
その際、藤田騎手も調整ルーム内でのスマホの使用を自己申告していたそうですが、ツイッターとYOUTUBEの“閲覧”のみで、“相手のある通信はしていない”(中日スポーツ)と説明のうえ調書に押印していたそうで、口頭による厳重注意で済んでいたようです。

ところが今回の文春報道により、閲覧だけではなく外部との接触に該当する通信もあったことが暴露され、騎乗停止処分を受け、本人は泣く泣く引退届を提出したそうです。
ルールの趣旨から言って、単なる映像や投稿等の閲覧の為の通信と、外部接触である人間相手の通信とは違反の程度が全く異なりますし、そこを虚偽申告してサインまでしていたとしたら騎乗停止は仕方ないでしょう。

調整ルームにおけるスマホ使用等に関するルールの変遷が曖昧で、“スマホ禁止が正式に決まる前だから今更騎乗停止はオカシイ!”とか、“一旦厳重注意で済んでいるのに再処分するのは法的にオカシイ!”、という意見もあります。
ただ上記のJRA側の説明が事実で、“相手のある通信はしていない”と虚偽申告していたのであれば、JRAを批判するのはちょっと違うでしょう。
(JRAの説明がウソなら批判しましょう)

実は2019年のフジテレビの馬好王国という番組で、藤田騎手と福永元騎手が調整ルームを案内するという放送が有りました。
正式な映像は無いのですが、ツイッターでの宣伝は残っていました。

皮肉なことに、この番組内で藤田騎手と福永元騎手が、
“調整ルームでは携帯(スマホ)はセーフティーボックスに預けないといけない”
と会話した上で藤田騎手が自身の貴重品ボックスを開けるシーンがあります。
(携帯電話、インターネットNG、というテロップまで出して・・・)

そして、スマホとサイフを取り出して、
“16時間ぶりにスマホ見ます”
“LINEとかきてるんじゃないの?”
“何件かきています”
といった会話をしています。

少なくとも、調整ルームにおいて2019年からスマホの使用すら制限がかかっており、藤田騎手本人もそれを自覚していたのが記録されてしまっています。
これを見ると、泣きながら引退届書いた話は本当に可哀想だけど、まあ処分は仕方ないかなあ、という気がしますね。

ただ世間に何の説明もなく突然引退してしまうと、元人気女性ジョッキーとしての引退後の活躍も無くなってしまいそうで、そこが一番残念です。