ふるさと納税の行き過ぎた返礼品競争に対し、“返礼額を30%以下にしなさい!”等の指導が今まで総務省から何度もありました。
ただ、あくまでも“指導”の域だったので、これに従わない一部の自治体(筆頭格は泉佐野市)は相変わらずやりたい放題のままでした。

そこでついに総務省は、“指導”ではなく“法律”でもって、“返礼品は寄付額30%以下の地場産品に限る”等のラインを定め、従わない場合は2019年度以降制度の対象外にするぞ!、という脅し(?)をかけました。
この脅しについては、昨年の9月頃に全国の自治体へアナウンスされています。

が、闘う地方自治体(?)である泉佐野市は、“じゃあ2018年度中はエエんやな!”とばかりに、アマゾンのギフト券を20%プレゼント!!!という無茶苦茶なキャンペーンを2018年3月末まで展開。
誰が見てもアマゾンのギフト券はやり過ぎですが、国に真っ向から盾突く泉佐野市の姿勢はちょっと痛快でもありました。

しかし・・・、やっぱり最後は国が勝つんですよねえ・・・。

3月22日に総務省は、泉佐野市等の4市町に対しては3月分の地方交付税の特別交付金の一部を配分しない!、と発表しました。
この4市町は、明らかにふるさと納税で国に盾突いていた自治体です。

地方交付税は、国が国税として集めた税金を地方へ配るという意味合いのもので、そもそも我が国では、ほとんどの地方自治体が国からお金を恵んでもらうシステムになっております。
特に人口も企業も少ない田舎の地方自治体は、自前の税収だけではやっていけないので、国から地方交付税を貰ってやりくりしています。

当然、泉佐野市等も地方交付税で財政をまかなっていた訳ですが、“ふるさと納税で儲けた分、お金はあげないよ!”と通告されたという事です。
まあまだ差し引きではプラスなんだと思いますが、お上(総務省)に盾突いたらこうなるんだ、という見せしめには十分なったと思います。

ところで、都会の税金を田舎に配るという意味では、“地方交付税”と“ふるさと納税”って、中身は似てる気がしませんか?

ふるさと納税に関して“住んでもいない市町村に税金を寄付するのは負担と受益の観点から言っておかしい”という意見をよく聞きます。
その思想は十分理解できるんですが、もともと税金は負担と受益が完全に一致する性質のものではなく、従来から地方交付税という形で、都会の住民や企業から集めた税金で全く関係のない田舎の道路や橋を作ってきたんですよね。

国全体で見ると、“地方交付税”も“ふるさと納税”も、都会で集めた税金を税収の少ない地方自治体へ配っている状況に変わりはない訳で、誤解を恐れず言えば、配る先を国が選ぶか個人が選ぶかの違いです。
そういう意味では、地元の土建屋さん等が国会議員に陳情して地方交付税を貰って道路を作る(選挙とのバーター)より、国民が自分の意志で自分の収める税金の納付先を“一部だけ”でも選べるというふるさと納税の制度は画期的な気がするんです。

“一部だけ”と言うのは、元々ふるさと納税できる税額は、住んでる自治体へ本来納める税金の2割が上限と決まっているからです。
しかも、ふるさと納税で税収が減った都会の自治体は、減った分の税収の3/4を地方交付税として国が補填してくれます(東京都等の一部の自治体を除く)。

国税と地方税の意味合いやバランスを本気で考えると難しい話ですが、このくらいの比率と金額なら、寄付集めに努力した地方も活性化するので結構いい制度だと思うんです。
ま、アマゾンのギフト券はいくらなんでもやり過ぎなんで、返礼品競争にならないような一定の仕組み作りは必要でしょうけどね。

今回の総務省の鉄槌は、やり過ぎた泉佐野市への“お仕置き”という事だけではなく、“地方交付税”と“ふるさと納税”の関係を改めて考えさせてくれる点で大きな意味があったなあと思う次第です。