先週、競馬の馬券がらみの脱税ニュースで、実に興味深いものがありました。
大阪市の会社員の男性が、馬券で稼いだ所得を申告せず、07~09年に約5億7000万円を脱税したとして、所得税法違反で大阪地裁に起訴されたというものです。

競馬でそんなに儲かるのか!!!という事実にまず驚いたのですが、記事を読むと、話はそう単純ではありません。
この人、競馬の馬券ソフトを自分で改良し、インターネットで大量の馬券購入を繰り返していたようです。

税務調査の結果、当該3年間で、約28億7000万円分の馬券を購入して約30億1000万円の当たり馬券の配当を得ており、利益は約1億4000万円だったそうです。
3年間で1億4千万円!!!、凄い!!!っと思ったりもするのですが・・・、
28億円余りの投資額からすると、勝った配当は約5%程度・・・。

私でも、勝った年はもう少し勝率高かったかな・・・、と思いつつ・・・。
まあ配当率はさておき、競馬みたいな不確定要素の多いギャンブルで、何年もこれだけの投資を続けられる事自体が凄いのは、馬券購入経験者なら分かりますね。

で、この人は全く税務申告をしていなかったようで、それは完全に犯罪です。
ただ、その脱税額がちょっと本人には納得しづらい。

純粋に儲かったのは、たった(!)1億4千万円なのに、5億7千万円の追徴課税を受けているようなんです。
これはナゼかと言いますと、馬券収入に対する税金の算出方法が独特(!)だからです。

馬券収入は、一般的に、所得税法では一時所得として分類されます。
一時所得の場合、収入金額から差引きできる金額は、その収入に対応して支出した金額に限定されます。

つまり今回場合、単純に当たり馬券の収入金額30億円から、当たり馬券だけの購入額を差し引きして計算し、外れ馬券の購入費用は完全に無視されます。
そうすると、実際に手元に残っているはずの利益1億4千万円より、税務上の所得は物凄い金額になってしまうんですね。

これは私が税理士を目指して勉強していた頃からイマイチ納得のいかない解釈でして。
株や不動産の売買で儲けた場合、その年の株や不動産の損得は、それぞれ年間トータルで考えます。

他の給料や年金といった所得と損失の通算が出来ないのは仕方無いとしても、同一種類の所得内のしかも同一の所得源泉のものは内部で通算しても良いと思うんです。

なんで馬券だけアカンねん!!!、と競馬好き税理士は思うに違いない・・・(誰?)。
この判決の行方が気になりますが、これだけの収入規模なら、事業所得か雑所得として申告することは出来なかったのだろうかと、税理士的には思ったりしました。