今週、我々の業界にとっては非常に注目の税務訴訟の最高裁判決が有りました。
争点は、相続税の算定に使われる“路線価評価”が実際の“時価”と大きく乖離している場合、国税サイドが“路線価評価は安すぎるから実勢価格で相続税を課税する!”ことの是非です。

相続税の算出には“路線価評価”を使うと決められていますので、今回のように国税側がそれを否定するのは“伝家の宝刀”と言われる必殺技で、まあめったにこの技は出さない上に、その是非を最高裁まで争ったので注目されていた訳です。
一部の事前予想では、国税のほうが逆転で負けるのではないかと言う話もあったのですが、結局、納税者の主張は認められず、下級審と同様に納税者敗訴でした。

“路線価”とは、日本中の主な道路に1㎡あたり何円という値段をつけている評価額で、相続税においては、その道路に接している土地の“時価”は“その路線価に面積をかけたもの”と決めています。
しかし実際に不動産を売るとなると、例えば同じ道路に接していても北側と南側では日当たりの関係で当然値段は違います。

この路線価による“時価”は、あくまで“相続税を計算する上で国民が困らないようにざっくり決めた価格”というニュアンスです。
最大のミソ(?)は、都会の路線価は、大抵の場合、実際の価格より相当安いということです。

特にマンション等はその傾向が大きく、タワマンの最上階などは最下層の階に比べると倍以上する事も普通にあるのに、路線価評価だとその辺がほとんど反映されず実勢価格と大きく乖離してしまいます。
その辺りの価格差を利用した節税が昨今流行っており“タワマン節税”などと呼ばれていました。

今回の訴訟の具体的な数字等は以下のようなもの。
・2009年・・・マンション2棟を14億円弱で購入
(借入金でマンション購入しており、完全に相続対策)
・2012年・・・94歳で亡くなり相続発生、マンション2棟の“路線価評価”は約3億3千万円とし、借入金残高のほうが多いから相続税はゼロ(!)で申告
(相続財産の評価額から借入金残高は差し引けるのでマイナスになり、相続税はゼロになったようです)
・国税が怒って“必殺技”を繰り出し、実際の評価額は12億7千万だ!として追徴課税

14億で買ったマンションを、3年後に3億3千万です!って申告したら、まあ怒られるわなって感じです。
実際の数字を聞くと、そりゃ国税が勝たないと正義じゃないよね、と皆さんも思うでしょう。

結構こういう大胆な節税(?)が資産家の間では普通に行われてきたんですが、そろそろ潮時かなあと思う判決です。