日本の個人金融資産は1500兆円もあるから、まだまだ国の借金は増やせるなどという、論理的に筋が通っているのか良く分からない論評があります。
ただ、この話を聞くと皆さん一様に、“どこに1500兆円もあんねん!!!???”って思いますよね。

この1500兆円の根拠は、日銀の発表している資金循環統計というものの中にあります。
日銀の発表なんで数字自体に間違いは無いのでしょうが、そもそもの“個人の金融資産”という言葉の定義が、かなり一般的なイメージと違います。

多分、この言葉で想像されるのは、“自由に使える個人の預貯金、株式等”の残高、といった感じでしょう。
しかし日銀の数字の実際の中身は、2011年6月末ベースでは以下のとおりです。

現金預金・・・829兆円
保険、年金準備金・・・420兆円
株式、債券、投資信託・・・180兆円
その他・・・62兆円
合計・・・1491兆円

このうち、保険、年金準備金とは、将来に備えて掛けている生命保険や年金の残高であって、純粋に自由に使えるお金とは言えません。
それでも、現預金だけで829兆円もあるなら、まだ余裕あるやんって話ですが・・・、残念なことに、この数字、個人の借金の事はまったく無視しています。

あくまでも個人の金融資産だけの話で、その一方で存在するの個人の住宅ローン等の金融負債は300兆円以上あるようです。
まあ・・・、それを差し引いても現預金だけで500兆円くらいの余裕はあるのかな・・・。

と、思ったら、この現預金は個人事業主の預金残高も入っているようです。
商売をやっている人は分かると思いますが、事業用の預金口座の残高なんて、資金繰りによってあっという間に消えてしまうもので、とてもそれを“自由に使える金融資産”とは呼べませんよね。

事業性預貯金の比率ははっきりしませんが、半分くらいあるというレポートも出ており、そのレポートでは、現実的な個人の金融資産は466兆円とはじき出しています。
データの取り方や数字の定義にもよりますが、本当の個人の余裕資金は4、5百兆円程度といったところでしょうか。

さてその一方の国債残高ですが、ここ10年でみると、毎年30兆円程度のペースで増え続けています。
地方債も合わせるとさらに増えます。

確かにこれからの10年くらいは、今までどおり国内ですべて国債を消化できるかもしれません。
でも15年たってさらに450兆円以上国の借金が増えたら・・・。

当面はギリシャやヨーロッパの国のような事にはならないでしょう。
でも、このままの状態で15年たったら・・・、ちょっとマズイ気がします。

資金循環統計に興味のある方は日銀のHPへ
http://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/faqsj.htm/