このところの東京エリアを中心としたタワマンブームにのっかって、“タワマン節税”という節税手法が流行っておりました。
これは、相続税を計算する際の財産評価において、不動産が実際の値打ちよりも低く評価されるのを利用した節税方法です。

初めて聞くとインチキ臭い方法に感じられるかもしれませんが、亡くなる前に預貯金等で不動産を購入して相続税評価を下げるのは“基本的に”古くから認められている節税手法でした。
しかし、高層マンションの上層階のような場合、実勢価格と相続税評価額の差が何倍にもなるケースが発生しており、節税とは呼べないレベルの事案が数多く出てきていたようです。

令和4年に争われた“タワマン節税訴訟”が有名で、この事案、具体的な数字を聞くと驚きます。
90歳の方が亡くなる3年ほど前に、敢えて10億円借金して14億円ほどのタワマン2つを購入しました。
(資産家の方で、自己資金は4億円ほど拠出し、他の資産もあったようです)

3年ほど後に亡くなって相続開始したのですが、その14億で買った2つのマンションの相続税評価は合計でも3.3億円ほどにしかならず、他の財産を合わせても借金の残額9.6億円を差し引くと相続税がかからないレベルになり、相続税ゼロで申告しました。
しかも亡くなった翌年にタワマンの一つを5.1億円で売却しております。

14億で買ったタワマンの3年後の相続税評価が3.3億円で、結果として相続税がゼロなんて・・・、無茶苦茶ですよね。
このケースでは相続税評価が安すぎるとして実勢価格(不動産鑑定士評価額)での追徴課税が行われ、納税者が裁判に訴えたものの最高裁までいって納税者敗訴が確定しました。

やり過ぎた節税に対して国税が正義の鉄槌をくだした感じですので、一般国民の側から見ても極めて納得の最高裁判決だったと思います。
ただ相続税の現場としては、じゃあどのくらいなら認められて、どのくらいは“やり過ぎ”なんだろう?、ってなりますよね。

その辺りは国税サイドも十分に分かっていたようで、タワーマンション等に対する相続税評価の方法を改めて、より実際の価格に近い評価額が出るように見直す検討を始めました。
その評価方法の試案が先月末に発表され、マンション特有の“総階数”、“所在階数”、“敷地持分”、“築年数”といった評価要素を取り入れる形で機械的に修正評価する方法に変わりそうです。

税法には曖昧なグレーゾンがつきものなのですが、この試案をみると結構すっきりしてて分かり易いです。
まあそれでも実際の評価額とはそこそこ開きが出そうですし、いくつか抜け道もありそうですが、少なくとも上記の最高裁の事案のような無茶な節税は無くなりそうです。