来月から最低賃金が引き上げられます。
東京では最低時給が1,113円、大阪で1,064円、私の住む兵庫でもついに千円の大台を超えて1,001円です。

物価がどんどん上がっていますので、強制的に法律で賃金を引き上げる事は一つの方法でしょう。
ただここまで上がってくると、パートさんの“年収の壁”がますます気になります。

壁となる年収は年々複雑化しておりますが、概ね以下のようになっています。
1.103万円・・・自分に所得税がかかってくる。
以前は配偶者控除38万円が受けられなくなるので、配偶者の税金も増えた。
しかし税法改正により、現在は150万円まで配偶者特別控除が同額38万円で受けられる(一定の場合は除外)。

2.106万円・・・パート先の会社が100人以上で週20時間以上勤務等の一定条件を超えると、配偶者の社保(被扶養者)から外れて自ら社保を負担する必要がある。

3.130万円・・・パート先の会社が50人未満でも社保に自ら加入。

4.150万円・・・配偶者特別控除の控除額が満額の38万円から段階的に減額、給料201万円を超えるとゼロになる。

上記1のように、税法は年収の壁を103万円から150万円に事実上引き上げていて、パートさんの勤務時間や賃金を増やしても大丈夫な方向へ動いています。
しかし社会保険は従来130万円の壁しかなかったのに、勤務先の企業の従業員数が100人以上の場合は106万円を超えると社保強制加入に改正され、従来より厳しくなりました。

さらにこの従業員数の上限を2024年からは50人以上にすることが決まっており、とにかくパートさんでも社会保険料を払え!という方向性です。
税金と社会保険で真逆の動きになっていて、この国は何をやっているんだろうという感じです。

ここで10月から最低賃金が上がるとなれば、勤務時間を減らして壁を超えないようにするのは自然の流れです。
なんせ社会保険料が高すぎますから。

税金が高いと皆さん思っておられますが、例えば年収130万円のパートさんの場合、所得税と住民税は合計最大で2万円余りです。
一方で、社会保険料は年18万円ほどになります。

年18万円ってなかなか凄い金額です。
年収130万円を月に換算すると、月給10万8千円位の収入で1万5千円以上社会保険料が天引きされ(額面の約15%)、40歳以上の方はさらに介護保険料もひかれます。

税金の年2万円も痛いですが、社保のほうが圧倒的にキツイ訳で、みんな130万円の壁を超えるのは絶対避けたかったはずです。
その壁を一定の場合には106万円に引き下げ、今後さらに従業員数の条件の引下げが決定しています。

岸田首相は“最低賃金を引き上げて2030年代には1500円にする!”と脳天気な事言ってますが、この社保の壁問題を解決しないと、単にパートさんの勤務時間を減らして人手不足を助長する事にしかならないでしょう。
取り敢えずなんとかしようということで、“当面”本人の負担が増える部分を“会社が肩代わりした場合”補助金を出すことを検討してるらしいですが、政府得意のドロナワ式パッチワークで何の根本的解決にもなっていません。

会社が肩代わりすれば表面上の給料が増えて他の面で色々影響が出る可能性ありますし(世の中所得制限だらけですし)、会社が補助金貰う事務にコストかけなければならないので面倒臭いだけです。
根本的な問題は、サラリーマン本人や配偶者に何の負担増もなく社会保険の被扶養者になれてしまうという社会保険の謎制度な訳で(配偶者は3号被保険者として1円も払わず将来年金が貰える)、ここを変えないと解決しない話です。

影響のある人が何千万人単位でいるので過去の政治家は今までなんとか避けてきた話ですが、岸田首相には是非決断をして欲しいですね。